概要
NTTドコモ モバイル社会研究所の調査によると、生成AIの利用率は2026年2月時点で51%となり、2025年2月の27%からほぼ倍増し、初めて過半数に達した。特に10~20代で利用率が高く、用途は動画生成よりも対話・相談や検索、文章生成が中心である。これは、生成AIが一部の技術関心層だけのものではなく、日常生活や仕事・学業に浸透し始めたことを示す。自治体にとっては、行政サービス、教育、情報発信、職員研修のあり方を見直す重要な材料となる。
ポイント整理
●ポイント①生成AI利用率は1年で27%から51%へ上昇し、初めて過半数に達した。
●ポイント②「知らない」は53%から29%へ大きく低下し、認知拡大が利用増加を後押ししている。
●ポイント③利用はプライベート46%、仕事・学業38%で、まず日常利用から浸透している。
●ポイント④10~20代の利用率が特に高く、若年層主導で普及が進んでいる。
●ポイント⑤利用内容は動画・画像生成より、対話・相談やテキストベースの活用が先行している。
内容のわかりやすい解説
今回の調査が示しているのは、「生成AIが広く知られるようになった結果、実際に使う人が急増した」という流れである。1年前は「知らない」が半数を超えていたが、2026年2月時点では3割弱まで低下した。つまり、普及の初期段階に多い「そもそも存在を知らない人が多い状態」から、「知っていて、使うか使わないかを選ぶ段階」へ社会が移りつつある。
また、利用の中心が動画や画像の高度な生成ではなく、「質問する」「相談する」「文章を作る」「調べものをする」といった対話型・文章型である点も重要である。これは、生成AIが特別なクリエイター向けツールとしてではなく、日常の補助ツールとして広がっていることを意味する。スマートフォン検索の延長として、生成AIを“会話できる情報支援役”として使う人が増えているとみられる。
年代差も大きい。10~20代で高い利用率が確認されていることは、学校教育や就職後の業務の中で、生成AIが標準的な道具になっていく可能性を示す。一方で、全年代で上昇しているため、今後は若年層だけの話ではなく、地域社会全体の情報行動の変化として捉える必要がある。
なお、この調査はWeb調査であり、インターネット利用環境を前提としている。そのため、地域全体の実態をそのまま完全に表すとは限らないが、「少なくともオンライン接点のある住民層では、生成AIが急速に一般化している」という傾向は十分に読み取れる。
政策・自治体への示唆
▼自治体政策視点
・行政運営
住民の半数規模が生成AIに触れ始めているなら、自治体への問い合わせ、情報取得、申請支援の入り口も変わる可能性がある。住民がAIで下調べした上で窓口に来る場面が増えれば、説明資料やFAQ、手続案内は「AI経由でも誤解なく伝わる文章」に整備する必要がある。
・教育
若年層で利用率が高いことから、学校現場では「使わせるか禁止するか」ではなく、「どう使えば学習効果が高まり、どこに注意が必要か」を教える段階に入っている。情報モラル教育に加え、課題作成、要約、調査補助、批判的読解の指導が重要になる。
・地域経済
中小事業者や個人事業主でも、文書作成、広報、接客補助、翻訳、企画立案の効率化に活用余地が大きい。商工支援では、補助金情報だけでなく、実務での導入支援や研修機会の提供が求められる。
・DX
自治体DXはこれまで電子申請やデータ連携が中心だったが、今後は「職員の知的業務をどう支援するか」も焦点になる。議事録要約、文案作成、庁内FAQ、住民向けチャット支援など、生成AIを前提にした業務設計が必要になる。
・人口減少対策
人口減少下では、職員数や担い手の減少を補う仕組みが重要になる。生成AIは万能ではないが、少人数で業務を回す自治体ほど、定型文作成や初期相談対応などで活用余地がある。
▼議会活動視点
【論点候補】
・自治体として生成AI活用方針を持っているか。
・学校現場での利用ルールと指導体制はどうなっているか。
・職員利用における個人情報・機密情報保護のルール整備は進んでいるか。
・住民向けデジタル相談や多言語対応に活用できるか。
・高齢者や非利用層を取り残さない対応策はあるか。
【調査テーマ候補】
・自治体職員の生成AI利用実態調査。
・学校・図書館・公民館でのAIリテラシー教育の現状。
・中小企業支援施策におけるAI導入支援の可能性。
・行政文書、広報、窓口業務への適用可能領域の整理。
・生成AI活用と情報公開・説明責任の関係。
【注意すべき論点】
・利用率が上がっても、回答の正確性は保証されない。
・住民案内や教育現場での利用では誤情報対策が必要。
・個人情報、機微情報、著作権、学習評価の公平性は慎重な設計が必要。
・「使える人」と「使えない人」の格差が新たな情報格差になるおそれがある。
地域レベルで考えた場合
【地方都市で起きる影響】
住民サービスの問い合わせ行動が変わり、自治体ホームページや広報資料は、検索エンジン向けだけでなくAI向けにも分かりやすい構成が求められる。企業誘致や創業支援でも、AI活用人材の有無が地域競争力に影響しやすくなる。
【中山間地域への影響】
専門人材が少ない地域では、生成AIは情報収集や企画補助の助けになり得る。一方で、通信環境、端末環境、デジタル支援人材が不足すると恩恵を受けにくい。導入支援を地域伴走型で行う必要がある。
【小規模自治体での実装難易度】
職員数が少ないほど業務効率化の効果は大きいが、ガイドライン整備、セキュリティ確認、導入判断の人的余力が不足しやすい。単独導入が難しい場合は、広域連携や共同調達、県主導の共通ルール整備が現実的となる。
今後注目すべきポイント
【今後の制度】
自治体内での利用ガイドライン、教育現場での活用基準、個人情報保護や著作権整理など、ルール面の整備が進むかが重要である。
【社会変化】
生成AIを使う住民が増えるほど、「行政説明は分かりやすく短く」がより求められる。住民側の情報取得速度が上がることで、行政の応答の質と速さも問われやすくなる。
【技術変化】
今は対話・文章利用が中心だが、今後は音声、画像、動画、翻訳、議事録、窓口支援との統合が進む可能性がある。自治体は単発導入ではなく、業務全体の流れの中で活用を考える必要がある。
一言まとめ(結論)
生成AIは流行段階を越え、自治体が前提条件として向き合うべき普及段階に入った。

